電子部品の連展グループがデジタルトランスフォーメーションを達成 「サンドイッチの法則」で1年400件以上のAIプロジェクトを実行

Acon sharing success stories on AI
連展科技の郭迺文経理室シニアスペシャルアシスタント(左)と詹長霖イノベーションアドバイザー(右)

人工知能(AI)ブームの中、海外の大手ハイテクメーカーだけでなく、台湾の多くの企業もAI導入に取り組むようになった。AIは台湾の多様な産業に変革と新たなチャンスをもたらし、産業のアップグレードにおいて重要な役割を担っている。設立36年を迎え、IT、デジタル家電及びハンドヘルドデバイス向け電子部品の設計、製造、販売を手掛ける連展科技純粋持株会社(ACON-HOLDING)は、近年AI導入による「成長」計画を推進しており、2022年には「デジタルトランスフォーメーション元年」戦略を策定した。郭迺文経理室シニアスペシャルアシスタントは、同社ではグループの全従業員が毎週木曜午前11時から12時までデジタルトランスフォーメーションのビデオプログラムに参加することが義務づけられており、産業のトレンドに遅れをとらないようにしていると述べた。

かつて、コネクタのような電子部品は情報通信産業の顧客に依存していたが、近年EV、グリーンエネルギー、スマート医療、AIoT工業、5G及び高速通信など3C(パソコン、スマートフォン、家電等)以外の分野が発展し、電子部品の新たな応用需要が拡大した。高付加価値の商機を生み出すため、現在これらの分野が連展グループの主要なターゲットとなっている。

12年前から生産フローのデジタル化を推進
連展グループのデジタル化の歩みについて語る郭迺文経理室シニアスペシャルアシスタント
連展グループのデジタル化の歩みについて語る郭迺文経理室シニアスペシャルアシスタント

郭経理室シニアスペシャルアシスタントは、連展グループは12年前にAPIの導入を開始して生産フローの改善と最適化を図ってきたとし、2016~2018年の間にテストと製造の自動化を通じて大幅なアップグレードを行ったと語る。

そして直近2年では、陳鴻儀総経理の下で「デジタルトランスフォーメーション委員会」が設立され、自動化によるデータ累積の改善、デジタル化のさらなる推進、作業効率と品質の全面的な向上に取り組み、新たなビジネスモデルを構築した。同社がAI導入に着手したのは、この段階からだ。

デジタルトランスフォーメーションが成功するか否かについて、陳総経理は4つのポイントがあると考えている。一つ目は、AIを組織文化の一部分とし、デジタルトランスフォーメーションを一種の思想、一種の習慣として、仕事の中に徹底的に溶け込ませることだ。二つ目は、主管の参画度を重視し、上の者が実行して下の者がそれにならうことで組織全体に浸透させること。三つ目は社内外のリソースを活用して、直接使用できるツールを見つけ出し、より速く、より効率的に推進することだ。最後は、PDCAの管理方法で、デジタルトランスフォーメーションを確実に実行する。各部門が関連する作業項目を決定し、ただちに結果を出せる具体的なケースを見つけ出して取り組み、奨励制度や相互学習によって前向きなムードを作り出す必要がある。

デジタルトランスフォーメーションを持って生まれた文化として根付かせる

連展科技の詹長霖イノベーションアドバイザーは、同社は経営陣もデジタルトランスフォーメーションを非常に支持しており、新たなツールが新たな思考をもたらすと考えていると述べた。連展科技はデジタルトランスフォーメーションを推進する際、一般企業のようなトップダウンではなく、「サンドイッチの法則」を採用した。一般社員もデジタル化プロジェクトに参加させることで、上層と下層が共通のデジタル言語を持つようにし、デジタルトランスフォーメーションコンテストを毎期実施している。

連展科技が構築したデジタルトランスフォーメーション文化について語る詹長霖イノベーションアドバイザー
連展科技が構築したデジタルトランスフォーメーション文化について語る詹長霖イノベーションアドバイザー

詹イノベーションアドバイザーは、なかでも印象的だったのは「バーチャルメトロロジー」だと振り返る。バーチャルメトロロジーが登場して、デジタル・ツイン(Digital Twin)、デジタル工場、バーチャルワークショップが可能となったが、これがなければスピーディーに現場の技術を他の工場にコピーすることはできない。正確な製造も重要だが、AIツールを応用すればライバルとの距離を大きく開くことができると詹イノベーションアドバイザーは語った。

簡単なステップで経営を全面的にデジタル化

連展科技はデジタルトランスフォーメーションを推進する中で、ツールの応用性が低く、統計やソフトウエアのマスターも困難であったことが、目標達成の障害となった。そこで2022年下半期、杰倫智能 (Profet AI)と提携してProfet AI AutoMLワークショップを2回開催し、AI人材育成を開始した。3年以内に1000人のデジタル人材を創出することを目指している。

このデジタルトランスフォーメーションは多くの成果を生んだ。連展科技は1年足らずで677件のデジタル化プロジェクトを実行し、このうちProfet AIプラットフォームを使用したプロジェクトが470件で7割以上を占めた。このほか、同社はProfet AIのコンサルティングのサポートで240人からなるデジタルチームを有し、生産、販売、人事、研究開発、財務までAIデモクラシーを達成している。

Profet AIの余常任世界業務総経理は、Profet AI AutoMLプラットフォームは製造業でよく使用される機械学習アルゴリズムを提供することで、使用者がすばやくオンラインで操作できるようになると説明する。経験やIT知識がない使用者もすぐにマスターし、共通言語を使用して5つのステップで操作を完了することが可能だ。連展グループは、AIを導入した新たなビジネスモデルによって、生産の最適化だけでなく管理品質の向上も実現した。

詹イノベーションアドバイザーは、かつて時間をかけて経験を磨く必要があった新たなツールの導入が、ハイテクによる自動化によってよりスピーディーになったものの、科学データの累積が不足しており、数学モデルの使用も容易ではなかったため、自動化によってできることは多くが分類だけだったと指摘する。しかし、Profet AIのAutoML導入後は、すばやく本来設定した目標を達成し、競争力を向上させることができるようになったと述べた。

陳総経理は、企業は競争力を持ち、持続可能な経営を行い、より幅広くより深いデジタルトランスフォーメーションを実行しなければならないと強調した。現在の産業は、フローの変化が複雑になっているだけでなく、ビジネスモデルの変化もスピーディーだ。このため、企業は正しいツールを十分に利用してデジタルトランスフォーメーションを達成し、競争力を高めなければならない。連展グループのAI応用は流行を追うためではなく、他社よりもより良い企業となるという志を叶えるためのものなのだ。