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製造業AIをPoCから実運用へ──Penangで考える、半導体のノウハウとAI ROI

製造業AIをPoCから実運用へ──Penangで考える、半導体のノウハウとAI ROI

マレーシアの半導体産業がより高付加価値な領域へと進む中、製造業に求められているのは、AIを個別の実験やユースケースにとどめず、ガバナンスの効いた、再現可能なワークフローの一部として運用することです。

Profet AIは、マレーシアのパートナー企業であるAshisuto Global Technologiesとともに、Penangで「From Semiconductor Know-How to AI ROI」フォーラムを共催しました。

台湾とマレーシア双方の業界関係者が参加した今回の議論では、製造現場の知見をガバナンス可能かつ再利用可能なAI資産へとつなげ、個別のAIユースケースから、測定可能な業務成果へと発展させるための考え方が共有されました。

ペナン州副首相(第2副首相)のYB Tuan Jagdeep Singh Deo氏

イベント冒頭では、Penang州副首相IIのYB Tuan Jagdeep Singh Deo氏が挨拶し、台湾企業が今後もPenangでの事業基盤を拡大し、製造、テクノロジー、人材育成における協力をさらに深めることへの期待を示しました。

Penangは、マレーシアの半導体・エレクトロニクス製造における主要拠点の一つであり、IC設計、先進パッケージング、先進製造など、より高付加価値な領域へと産業基盤を広げています。

台湾企業が東南アジアへ製造拠点を展開する際には、設備や生産能力だけでなく、長年蓄積してきた工程知識、品質に関するノウハウ、マネジメントの知見を新たな製造拠点へ移転することも重要になります。

AI活用を阻むのは、モデルではなく「知識」と「ワークフロー」の分断

台湾の半導体業界での実務経験を踏まえ、Profet AI Special Assistant to the CEOのJames Yangは、企業規模や製造プロセス、ITアーキテクチャが異なっていても、AIを拡張する際には共通した課題があると指摘しました。

その一つが、データの分散です。

さらに、現場の知識が人やシステムに分散していること、AIプロジェクトを拡張することの難しさ、そしてAIモデルが日々の業務フローから切り離されていることも課題となります。

Profet AI CEO特別補佐 James Yang氏

「重要なのは、AIを利用している従業員の人数ではありません。特定の問題への対応時間を短縮できるのか、First Pass Yield(FPY)を改善できるのか、あるいは若手エンジニアが熟練エンジニアに近い判断をできるようになるのか、という点です。AIのユースケースは、工場ですでに測定している問題から始める必要があります。それによって初めて、AIを実際の業務価値につなげることができます。」

半導体製造では、ロット条件、製品仕様、工程レシピ、設備状態、テストプログラム、環境条件など、さまざまな要素が関係します。

同じセンサー値や検査結果でも、製品、設備、工程のどの段階で発生したものかによって意味が異なる場合があります。そのため、AIは個々のデータだけでなく、問題の背景にある製造現場全体のコンテキストを把握する必要があります。

AIを活用する上で、データだけでは十分ではありません。

エンジニアが適切なエンジニアリング判断とは何かをAIに継続的に学習させていくことも重要です。

AIモデルはパターンや原因の可能性を特定できます。一方で、十分な根拠があるのか、どの制約条件を考慮すべきか、そしてその生産状況に対してどのような対応が適切なのかを判断するのは、依然として現場のエンジニアです。

人によるレビューとフィードバックを重ねることで、個人に蓄積された経験を、組織として継続的に活用できる能力へと発展させることができます。

人を置き換えるのではなく、人ができることを拡張する

Yangは、次のようにも述べています。

「私たちの目標は、人を置き換えることではなく、人ができることを拡張することです。エンジニアリングの知識、意思決定ロジック、ワークフローを、ガバナンスの下で再利用可能なAI資産として扱えるようになれば、重要なノウハウが一人のエンジニアや一つの工場だけに閉じることはありません。適切なガバナンスの下で、チームや拠点を越えて安全に活用できるようになります。」

この考え方を中核に据えているのが、Profet AIのDomain Twin™です。

Domain Twin™は、エンタープライズAIの中核として、予測モデル、領域知識、ワークフロー、ガバナンスを統合したオペレーションレイヤーを提供します。

AutoMLでは、構造化された製造データから、ノーコードで予測モデルを構築できます。

AI Studioは、Agentic AIによる協働環境として、AIアシスタント、デジタルワーカー、ワークフローと連携したAIアプリケーションの開発を支援します。

AIが日々の業務フローに組み込まれるほど、ガバナンスは後付けではなく、実運用の前提となります。

企業は、誰がタスクを開始したのか、AIがどのデータ、ツール、モデルを利用したのか、どのようなアクションを実行したのか、そしてどのような結果につながったのかを把握する必要があります。

IDやアクセス管理から実行結果までを一貫して記録できて初めて、AIを単一の生産ラインから複数拠点・国をまたぐオペレーションへと、管理・監査可能な形で展開できるようになります。

OSATの次のステージは、自動化レベルの向上だけではない

台湾人工知能協会アドバイザーのHoward Hsieh氏は、OSAT業界の視点から、企業の業務や意思決定のあり方について説明しました。

OSAT企業では、パッケージ技術の進展に加え、製品・工程の複雑化、コスト・納期へのプレッシャー、人材不足、サプライチェーンの不確実性といった課題が同時に存在しています。

従来の自動化は、あらかじめ定められたルールを実行することに強みがあります。しかし、生産条件が変化し、異常の原因が相互に影響し合う状況では、単に実行速度を高めるだけでは十分ではありません。

求められるのは、状況を理解し、より迅速に意思決定することです。

そのためAIは、R&Dやプロセスイノベーション、生産・設備管理、品質、サプライチェーン、エネルギー管理など、より幅広い業務領域へと活用範囲を広げています。

工程パラメータの探索範囲を絞り込むこと、設備や品質に関するリスクを早期に把握すること、受注・生産能力・在庫・エネルギー利用に関する意思決定を支援することなどが、その活用例です。

しかし、AIのユースケースが増えたからといって、企業のAIトランスフォーメーションが完了したことにはなりません。

各部門がそれぞれ独自のモデル、データ環境、運用プロセスを構築すれば、AIによって新たな情報サイロが生まれる可能性があります。

AI活用を持続的に拡大するには、共通のAI・データ基盤、明確なガバナンスとサイバーセキュリティの仕組み、そしてエンジニアリング、IT、データチーム、経営層が連携できる運用モデルが必要です。

台湾人工知能協会アドバイザー Howard Hsieh氏

「AIがCopilotからCoworkerへと進化すると、AIは日々の仕事や意思決定の一部となり、フィードバックを重ねるたびに学習していきます。変えるべきなのはシステムだけではありません。企業がどのように業務フローを設計し、人材を育成し、人とAIの役割分担を再定義するかも変えていく必要があります。」

Hsieh氏は、AIがCopilotからCoworkerへと進化することで、AIが日々の業務や意思決定の一部となり、フィードバックを通じて継続的に学習していくと説明しました。

設備に異常リスクの兆候が見られた場合も、AIは単に予測結果を提示するだけではありません。

関連する工程記録を集め、過去の事例を比較し、点検手順を推奨し、担当者へ通知し、その後の対応を追跡することで、AIの価値は単に「答えを提示すること」から「業務を進めることを支援すること」へと広がります。

これは、すべての判断をAIに委ねるという意味ではありません。

どのタスクを自動化できるのか、どのアクションに人による確認が必要なのか、どの判断を専門家のレビュー対象とするのかを、企業側で明確に定義する必要があります。

そのため、AIトランスフォーメーションはIT部門だけのプロジェクトとして捉えることはできません。

ワークフロー設計、意思決定権限、人材育成、マネジメントの仕組みまで含めて考える必要があります。AIが日々の業務に組み込まれることで変わるのは、技術スタックだけではなく、組織がどのように問題を捉え、行動するかという点でもあります。

業界でのAI活用から、測定可能な業務成果へ

Malaysia Semiconductor Industry Association(MSIA)のTechnical DirectorであるDuncan Lee氏は、マレーシア企業におけるAI活用が進んでいることに触れながら、次の段階として、汎用AIツールの利用から、より深い企業・業務領域へのAI活用へ進むことの重要性を指摘しました。

半導体製造においてAIを活用するには、自動化、データ、部門横断の連携を強固な基盤とし、個別の問題を解決するだけでなく、より広い製造上の意思決定を支援することが求められます。

Ashisuto Global TechnologiesのCOOであるTham Kok Tong氏は、マレーシアの製造企業におけるAI活用の事例を紹介しました。

そこでは、ビジネス上のニーズを特定し、データを準備し、生産現場でアプリケーションを検証するというAI活用のプロセスが示されました。

工程・品質データを用いた製品不良の予測や、センサー・設備データを用いた設備状態の評価など、事例は異なっていても、その出発点には共通点があります。

それは、測定可能な指標と結び付いた、明確な業務上の課題を定義することです。

企業は、その課題が実際の生産・品質指標と結び付いているか、十分かつ利用可能なデータがあるか、モデルの出力を具体的なアクションへつなげられるか、そして導入後も改善を継続的に測定できるかを確認する必要があります。

課題、データ、アクションがつながっていなければ、どれほど高性能なモデルであっても、意味のある業務価値を生み出すことは困難です。

Ashisuto Global Technologies Tham Kok Tong氏

AIを日々の意思決定へ

イベントの最後には、在ペナン日本国総領事館の総領事であるShinya Machida氏が挨拶し、台湾、マレーシア、日本それぞれの業界視点をつなぐ議論を締めくくりました。

今回の議論が示したのは、製造業にとって本当の課題は、さらにPoCを立ち上げることではなく、AIを日々の意思決定に組み込み、測定可能な業務成果を継続的に生み出すことだという点です。

技術、人材、業務プロセスのいずれにおいても、AIを個別のユースケースにとどめず、現場で継続的に活用できる仕組みへと発展させることが、次のステージとなります。

Profet AIは今後も、台湾で培ってきた製造業AIの経験をさまざまな市場へ展開し、現地のパートナーや製造企業とともに、現場のノウハウをガバナンスの下で再利用可能なAI資産へとつなげ、個別のAIユースケースからROIへと発展させる取り組みを進めていきます。

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脅威からフレームワークへ──Agentic AI時代の7つの能力領域、あなたの企業はどの成熟度にあるか

脅威からフレームワークへ──Agentic AI時代の7つの能力領域、あなたの企業はどの成熟度にあるか

7つの能力領域と3段階の成熟度モデル:従来とは異なる防御の考え方へ

前回の記事を読み、「脅威ごとに対策製品を導入すれば十分ではないか」と考えた方もいるかもしれません。しかし、その発想はいったん立ち止まって見直す必要があります。

脆弱性を一つずつ塞いでいくという考え方は、攻撃の多くが人手で行われていた時代には一定の効果がありました。しかし、攻撃者自身がAIエージェントを活用するようになった現在では、新たな攻撃手法が生まれるスピードは、従来のセキュリティ対策だけでは追いつけない水準に達しつつあります。

本稿で取り上げるのは、新たな脅威ごとに対策を追加することではありません。Agentic AI時代に求められる、新しい防御の考え方です。

Zero Trustという考え方は、1994年にStephen Paul Marshがスターリング大学(University of Stirling)の博士論文で体系的に提唱したことに始まります。その後、2020年には米国国立標準技術研究所(NIST)がSP 800-207を公開し、Zero Trust Architectureの具体的な指針を示しました。

Anthropicは『Zero Trust for AI Agents』において、この考え方をAgentic AIという新たな攻撃領域へ適用し、実装レベルまで落とし込んだ7つの能力領域を提示しています。

3段階の成熟一つの原則、三つの基本原則度は、選択肢ではなく成長プロセス

Zero Trustの考え方は、一言で言えば次のとおりです。

「何も信頼せず、すべてのアクセスを検証し、侵害はすでに発生していることを前提とする。」

これを具体化すると、次の三つの基本原則になります。

  • 常に検証する(Never Trust, Always Verify):すべてのアクセス要求は、認証と認可を経る必要があります。企業ネットワーク内部からのアクセスであるという理由だけで、特別な信頼を与えることはありません。
  • 侵害を前提とする(Assume Breach):システムは、侵入や不正利用が発生することを前提として設計します。重要なのは侵入そのものを完全に防ぐことではなく、侵害が発生した場合でも、攻撃者が及ぼせる範囲や影響を最小限に抑えることです。
  • 最小権限(Least Privilege):業務遂行に必要な最小限のアクセス権限だけを付与します。万が一、認証情報やAIエージェントが悪用された場合でも、被害を限定的な範囲にとどめることを目的とします。

しかし、これらの原則以上に重要なのが、一つの判断基準です。

その対策は、攻撃を「不可能」にするものなのか。

それとも、単に攻撃を「面倒」にしているだけなのか。

踏み台サーバーの追加、レート制限、標準とは異なる通信ポートの利用など、「攻撃の手間を増やす」ことを目的とした対策は、一回あたりの攻撃コストが限りなくゼロに近い自動化された攻撃者に対しては、防御効果が大きく低下します。

一方、本当に有効なセキュリティ制御には共通する特徴があります。

  • ハードウェアに紐づいた認証情報
  • 有効期限を持つトークン
  • 暗号技術に基づくID
  • そもそも到達できないネットワーク経路

これらはいずれも、攻撃者の行動そのものを制限する仕組みです。

この考え方は、これから紹介する7つの能力領域すべてに共通する判断基準となります。

3段階の成熟度は、選択肢ではなく成長プロセス

Anthropicは、各能力領域をFoundation、Enterprise、Advancedの3段階の成熟度モデルとして整理しています。EnterpriseはFoundationを土台として構築され、AdvancedはEnterpriseの上にさらに高度な制御を積み重ねる構造です。つまり、この3段階は別々の選択肢ではなく、既存のセキュリティ対策を段階的に強化していく成長プロセスを示しています。

Foundationは、Zero Trustへ移行するための出発点です。Enterpriseは、一定規模以上の企業が目指すべき現実的な到達目標であり、Advancedは、高度な規制産業や重要インフラ、あるいは障害発生時の影響が極めて大きいAIエージェント環境を想定したレベルです。

ここで重要なのは、前回の記事で紹介したように、攻撃スピードそのものが大幅に加速していることです。その結果、Foundationで求められる基準そのものが、以前よりも大きく引き上げられています。

例えば、かつてはAPIキーを定期的にローテーションするだけでも、一定のリスク管理策として受け入れられていました。しかし現在では、それだけでは十分とは言えません。

短い有効期限を持つトークン、暗号技術に基づくID、IDベースの分離、自動化された初動アラートのトリアージ。これらは、もはや高度な追加機能ではなく、Foundationで備えておくべき基本要件になりつつあります。

七つの能力領域は、基盤からガバナンスまでをつなぐ一つの防御チェーン

Agent Identity and Authentication(エージェントのIDと認証)

ID管理は、すべての制御の土台です。検証可能なIDがなければアクセス制御は機能せず、どのAgentが何を実行したのかも追跡できません。成熟度は、暗号技術に裏付けられた永続IDからライフサイクル管理された証明書認証へ、最終的にはHSMとリモートアテステーションを組み合わせたハードウェアバインド型IDへ進みます。

IDを持つだけでは十分ではありません。Agentはサービスへアクセスするたびに、自身の正当性を証明する必要があります。認証も短寿命トークンからmTLS、さらにハードウェアバインド証明書へと高度化します。APIキーのローテーションだけでは、ライブラリから取得可能な認証情報である限り、攻撃者の負担はほとんど変わりません。

Access Control and Privilege Management(アクセス制御と権限管理)

正規の権限を持つAgentで問題になるのは、「誰か」ではなく「何をするか」です。成熟度は、RBACによるデフォルト拒否から、時間・場所・リスクスコアなどを考慮するABACへ、最終的には操作のたびに再評価するリアルタイム認可へ進みます。

OWASPが提唱するLeast Agencyは、最小権限をさらに一歩進めた考え方です。どのツールを使えるかだけでなく、何ができるか、どれだけ頻繁に使えるか、どこで使えるかまで制御対象とします。例えばデータベースツールには検索権限だけを与え、更新や削除は許可しません。

RBACとABACの違いも重要です。RBACは「そのAgentは何者か」という役割だけで権限を決めます。一方ABACは、時間・場所・データの機密度・リスクスコアなど実行時の状況も判断材料に加えます。同じカスタマーサポートAgentでも、通常業務中の顧客検索は許可され、深夜に大量の機密データへアクセスしようとすれば拒否や追加認証が求められます。RBACからABACへの移行とは、「誰か」という静的判断から、「今何をしようとしているか」という動的判断への転換です。

権限モデルが決めるのは「許可するかどうか」ですが、権限管理は「いつまで許可するか」も重要です。静的権限はタスク終了後も残り続け、長期的なリスクになります。動的権限は必要な間だけ一時的に昇格し、終了後すぐに回収されます。さらにJIT/JEAでは、権限付与そのものを実行直前まで遅らせ、必要最小限・最短時間だけ利用を許可します。

最後はリソース境界です。基本はネットワークではなくIDベースで分離し、成熟度が上がるにつれてコンテナサンドボックス、最終的にはハードウェア分離へ進みます。不正入力を扱うAgentにとって、サンドボックス実行は追加機能ではなく標準要件です。

Observability and Auditing(可観測性と監査)

アクセス制御が「何を防げるか」を決めるなら、可観測性は「実際に何が起きたか」を明らかにします。ログはタイムスタンプ付き記録から改ざん耐性を持つ監査ログへ、さらに集中監視基盤へのリアルタイムストリーミングへ発展します。

成熟度より先に整備すべきなのが二つの指標です。一つは異常発生から人が認識するまでの時間を示すDwell Time、もう一つはアラートのうち実際に調査まで至った割合を示すCoverageです。AIによる自動化が最も効果を発揮するのは、この二つの改善です。

もう一つ重要なのがトレーサビリティです。各リクエストへ一意のIDを付与し、その後のすべての処理へ引き継ぐことで、複数Agentにまたがるワークフロー全体を追跡できます。ログが「何が起きたか」を示すなら、トレーサビリティは「なぜそうなったか」を示します。

Behavioral Monitoring and Response(行動監視と対応)

異常を検知するには、まず正常状態を知る必要があります。ベースラインは手作業で定義したルールから始まり、統計的学習、自律的に更新されるベースラインへと進化し、Memory Driftのような緩やかな変化も検知できるようになります。異常検知も閾値ベースから統計モデル、さらにコンテキストを含めた機械学習へ発展します。

異常検知以上に重要なのは、その後の対応速度です。AIが担うべきなのはログ収集、証跡保全、報告書作成などの定型作業であり、封じ込めや公表、顧客対応の判断は人が担います。対応能力も、アラート通知とトリアージAgentによる初期分析から、自動封じ込め、最終的には複数システムを横断するAgentic SOARへと成熟します。自動化の目的は、人の判断を置き換えることではなく、判断までの時間を短縮することです。

もう一つ重要なのがトレーサビリティです。各リクエストへ一意のIDを付与し、その後のすべての処理へ引き継ぐことで、複数Agentにまたがるワークフロー全体を追跡できます。ログが「何が起きたか」を示すなら、トレーサビリティは「なぜそうなったか」を示します。

Input Validation and Output Controls(入力検証と出力制御)

この領域が対処するのは間接プロンプトインジェクションです。入力検証はフォーマットチェックから始まり、エンコードされたペイロードや不審な命令のフィルタリングへ、さらにAI分類器とコンテンツ境界を組み合わせた多層防御へ発展します。自然言語入力は自由形式で予測が難しく、ルールベースだけでは十分に防げません。

一方、出力制御が防ぐのは情報漏えいです。機密情報のパターン検出から、出力内容の意味解析やソーシャルエンジニアリングの検知へ、最終的には高リスクな操作に人の承認を必須とします。入力検証は攻撃を防ぎ、出力制御は情報流出を防ぐものです。どちらか一方だけでは不十分です。

Integrity and Recovery(完全性とリカバリー)

侵害が発生すると、攻撃者はAgentそのものではなく設定や実行環境の改ざんを狙います。成熟度はバージョン管理から電子署名、さらにImmutable Infrastructureへ進みます。設定を修正するのではなく、安全性を確認した新しい環境へ丸ごと置き換え、実行前にはイメージの完全性を検証します。

興味深いのは、リスクを十分に管理できるコンポーネントでは、自動更新のほうが手動承認より安全な場合があることです。更新遅延そのものが攻撃機会になるためです。署名済み更新だけを自動適用し、署名されていない変更は拒否することで、安全性と更新速度を両立できます。

リカバリーも、文書化されたロールバックから自動ロールバック、最終的には自己修復システムへ進化します。既知の正常状態へ確実に戻せない環境では、高度な自動化も十分な効果を発揮できません。

AI Governance Policies(AIガバナンスポリシー)

技術的な制御は、ガバナンスで定義されたルールを実装する手段です。成熟度は利用ポリシーの文書化から、セキュリティ・法務・事業部門を含む全社ガバナンスへ、さらにデプロイプロセスへ組み込まれた自動ポリシーチェックへ進みます。

ここで無視できないのがShadow AIです。従業員が承認されていないLLMやAIツールを利用すると、認証、アクセス制御、監査、データ保護といった仕組みをすべて迂回してしまいます。ガバナンスとはルールを作ることではなく、それを企業全体で守れる仕組みを作ることです。

七つの能力領域は、一つの防御チェーンである

七つの能力領域を見ても、新しい攻撃手法が現れるたびに対策を増やす必要はありません。確認すべきなのは、自社のAgentがこの七つの領域でどの成熟度にあるかです。

ID管理はアクセス制御と責任追跡の前提となり、可観測性は何が起きたかを明らかにし、行動監視は異常を検知します。入力・出力制御は境界で攻撃と情報漏えいを防ぎ、完全性とリカバリーは侵害後の復旧を支えます。そしてAIガバナンスが、そのすべてを継続的に運用する土台になります。どれか一つでも欠ければ、そこが攻撃者の侵入口になります。

次回は、このフレームワークを実装へ落とし込みます。攻撃速度が「日単位」から「時間単位」へ短縮される時代に、企業のセキュリティ運用はどのように変わるべきかを具体的に見ていきます。

脅威からフレームワークへ──Agentic AI時代の7つの能力領域、あなたの企業はどの成熟度にあるか 続きを読む »

Agentic AI時代に変わるサイバーセキュリティ

Agentic AI時代に変わるサイバーセキュリティ

侵入から情報流出まで72分。
Agentic AI時代に企業が向き合うべき5つの新たな脅威

AIは、攻撃側と防御側双方の対応スピードを大きく変化させています。しかし、多くの企業では、この変化がセキュリティの前提そのものを変えつつあることが、まだ十分に認識されていません。

Palo Alto Networks Unit 42の『2026 Global Incident Response Report』では、50カ国以上・750件を超える重大なインシデントを分析した結果、最も迅速だった上位25%の攻撃では、初期侵入から情報流出までに要した時間は平均72分だったと報告されています。これは前年と比較して約4倍の速さです。同レポートではさらに、脆弱性が公開されてから攻撃者による自動スキャンが開始されるまでの時間も、平均15分にまで短縮されたとしています。

こうした傾向は、単一の調査結果に限ったものではありません。Verizon『2026 Data Breach Investigations Report』によれば、データ侵害の約3分の1はソフトウェアの脆弱性を起点としており、盗難された認証情報を上回って、現在では最も主要な初期侵入経路となっています。一方、防御側については、World Economic ForumとKPMGによる『Empowering Defenders』において、AIを活用した包括的な防御体制を整備している企業では、侵害の検知から対応までの期間を約80日短縮でき、平均的な情報漏えいコストも最大190万米ドル削減できる可能性が示されています。

72分、そして15分。

これが現在の攻撃者のタイムラインです。では、自社のセキュリティ体制は、このスピードに対応できるでしょうか。

AIエージェントの普及と攻撃の高度化は同時に進んでいる

企業がAIエージェントを業務へ導入するスピードも、急速に加速しています。

BCG『2026 AI Radar』では、世界のCEOの90%が、AIエージェントは2026年中に投資対効果(ROI)を生み出すと期待していることが示されています。またGartnerは、2026年末までに企業アプリケーションの40%へ特定業務向けAIエージェントが組み込まれると予測しています。この割合は2025年初頭には5%未満でした。

これらの数字が示しているのは、同じ一つの変化です。

AIは、防御側だけを加速させているわけではありません。攻撃側も同じ技術を利用し、同じように速度を高めています。違いがあるとすれば、その変化に誰が先に気づき、前提を見直せるかという点です。

これまで企業が「AIセキュリティ」や「AIガバナンス」を議論する際、多くの場合は次のような点に注目していました。

  • モデルは安全か
  • 入力したデータは学習に利用されるのか
  • プライバシーポリシーは適切か

もちろん、これらは重要な論点です。しかし、それらが前提としているのは、従来の生成AI利用モデルです。

2026年に入り、企業が本当に向き合うべき課題は別のところにあります。

企業がAIエージェントを業務の前線へ配置し始める一方で、攻撃者も同じ技術を利用し始めています。そして、多くの場合、攻撃側の方が先に新しい技術を試し、活用しています。

その結果、AIガバナンスそのものが、企業競争力を左右する要素へと変わり始めています。

なぜ従来のセキュリティ対策だけでは十分ではないのか

従来のセキュリティモデルは、「誰がアクセスするのか」を管理する考え方に基づいて設計されてきました。

利用者の本人確認を行い、権限を確認し、許可された範囲であればアクセスを認める。この考え方は、長年にわたり企業の情報システムを支えてきました。

しかし、AIエージェントでは事情が異なります。

AIエージェントは正規のアカウントを持ち、正式に権限を付与されています。不正に侵入しているわけではなく、認証も適切に行われています。

問題となるのは、「権限を取得した後に何を実行するか」です。

これは、従来のサイバー攻撃とは本質的に異なる点です。

従来のアクセス制御は、「誰がアクセスできるか」を管理する仕組みでした。しかし、データベースを参照し、メールを送信し、さらにはMES、ERP、OTシステムなどへアクセスできるAIエージェントが、本来意図されていない操作を実行した場合、従来のアクセス制御だけではそれを防ぐことは困難です。

なぜなら、システムから見れば、それらはすべて正規の認証情報を利用した、正当な操作として実行されているからです。

つまり、問題は「権限を持っているかどうか」ではなく、「その権限がどのように利用されるか」へ移りつつあります。

以下で紹介する5つの脅威は、それぞれ手法は異なりますが、共通して狙っているのはこの点です。

Agentic AI時代に現実となりつつある5つの脅威
1. 間接プロンプトインジェクション(Indirect Prompt Injection)

従来のチャット型AIは、利用者から直接入力された指示に応答する仕組みでした。一方、AIエージェントはWebサイトやドキュメント、データベースなどから自律的に情報を取得し、それを基に判断・実行します。

この違いが、新たな攻撃経路を生み出しています。攻撃者はWebページやメール添付ファイル、共有ドキュメントにAIエージェントだけが解釈する命令を埋め込み、意図しない操作を実行させることができます。

根本的な原因は、LLMが「参照情報」と「実行すべき命令」を完全には区別できないという技術的な制約です。Microsoftの研究でも、利用者には見えない命令であっても、AIエージェントが正当な指示として解釈してしまう可能性が示されています。

こうしたリスクは、AIエージェントがMES、ERP、OTシステムなどと連携する製造現場ではさらに深刻になります。MDPI『Information』(2026年1月)は、ICS環境では情報漏えいだけでなく、生産設備の操作にまで影響が及ぶ可能性を指摘しています。さらにCISによれば関連攻撃は前年比340%増加しており、OWASP GenAI Security ProjectでもPrompt InjectionはAgentic AIにおける最重要脅威として位置付けられています。

2. ツール悪用とツールチェーン攻撃(Tool Misuse)

AIエージェントでは、利用できるツールが増えるほど、攻撃対象も広がります。

攻撃者はツールの説明文やインターフェースを書き換え、AIエージェントに改ざんされたツールを正規のものと誤認させることがあります。これはTool Poisoning(ツールポイズニング)と呼ばれる攻撃です。また、一見正常なツールとして一定期間動作させ、AIエージェントが信頼した後に悪意ある実装へ切り替えるRug Pullという手法も確認されています。

実際にAnthropicは、世界で初めて確認された悪意あるMCPサーバーの事例を紹介しています。このサーバーは正規のメールサービスを装いながら、利用者が送信したメールを密かに複製し、外部へ送信していました。

さらに警戒すべきなのが、ツールチェーン攻撃(Tool Chain Attack)です。

社内CRM検索ツールとメール送信ツールは、それぞれ単独では安全に運用されていても、AIエージェントが両者を連携させることで攻撃に悪用される可能性があります。例えば、CRMから顧客情報を取得し、そのままメール送信ツールを利用して外部へ送信するといった一連の処理です。

この一連の操作は、すべて正規の認証情報を用いて通常のアプリケーションとして実行されます。そのため、従来のマルウェア対策では異常として検知できない可能性があります。

ツールそのものだけがリスクになるわけではありません。

AIエージェントの自律的な動作も、攻撃に悪用される可能性があります。

人間であれば、同じ作業を繰り返していれば途中で違和感を覚え、確認や中断を行います。しかしAIエージェントは、ロジック上「さらに確認が必要」と判断すれば、人手を介さずに同じ処理を繰り返し実行します。

攻撃者はこの特性を利用し、高コストな外部APIを繰り返し呼び出すループへAIエージェントを誘導することで、短時間のうちにサービス停止やクラウド利用料の急増を引き起こすことができます。

この攻撃では、システムへ不正侵入する必要はありません。AIエージェント自身が正規の機能を繰り返し利用するだけであり、多くの場合、異常に気付くのは請求額の急増やサービス障害が発生した後になります。

つまり、これは従来型の「不正アクセス」ではなく、正規の機能が過剰に利用されることで成立する新しい攻撃手法と言えます。

3. アイデンティティと権限の悪用(Identity and Privilege Abuse)

複数のAIエージェントが連携する環境では、過剰な権限継承(Unrestricted Privilege Inheritance)が代表的なリスクとなります。

例えば、高い権限を持つ管理者Agentが作業Agentへ処理を委譲する際、権限を必要最小限に限定せず、そのまま引き継いでしまうケースです。その結果、作業Agentは本来不要な情報やシステムにもアクセスできる状態になります。

もう一つが、Confused Deputy Problem(混乱した代理人問題)です。権限の低いAgentが正規の指示に見える要求を高権限Agentへ転送し、高権限Agentが利用者の意図を十分に確認しないまま処理を実行してしまうことで、本来許可されていない操作が実行される可能性があります。

リスクは権限管理だけではありません。Agentのメモリも攻撃対象になります。

Agentが過去のセッションで使用した認証情報やAPIキーをキャッシュしたまま再利用しており、適切なメモリ分離が行われていなければ、攻撃者はそれらの認証情報を取得させ、本来の権限では実行できない操作を行わせることができます。その結果、セッションをまたいだ権限昇格につながる可能性があります。

複数のAIエージェントが互いを信頼し、自動的に処理を委譲する環境では、こうしたリスクはさらに拡大します。また、問題が発生した場合には、どのAgentによるどの委譲が原因だったのかを、後から処理の流れを追跡しなければならないケースも少なくありません。

4. サプライチェーンとモデルリスク(Supply Chain Risks)

Agentic AIシステムが従来のソフトウェアと大きく異なるのは、実行時に外部ツールや異なるAIモデル、Personaを動的に組み合わせながら処理を行う点です。そのため、攻撃対象は従来のソフトウェアサプライチェーン分析だけでは十分に捉えきれない範囲へ広がっています。

リスクは大きく二つあります。

一つは、モデルそのものに対するリスクです。学習データやファインチューニングの過程が改ざんされると、モデル内部へバックドアが埋め込まれる可能性があります。Anthropicの研究では、わずか250件の汚染された学習データだけで、6億〜130億パラメータ規模のモデルへバックドアを埋め込めることが示されており、その影響はSFTやRLHFなどの後続学習を経ても残る可能性があります。

もう一つは、ツールやフレームワークに対するリスクです。PyTorchでは依存関係混乱(Dependency Confusion)を悪用し、悪意あるパッケージがSSHキーを窃取する攻撃が確認されています。また、セキュリティ研究者は主要なAIモデル共有プラットフォーム上で約100件の悪意あるAIモデルを発見しており、その一部は読み込まれた時点で外部とのリバース接続を開始していました。

つまり、AIモデルでは「どのモデルを使うか」だけでなく、「どのようなデータで学習され、誰の手を経て提供されたのか」というモデルの来歴(Provenance)そのものが、新たなセキュリティ確認対象になります。

5. メモリとコンテキスト汚染(Memory and Context Poisoning)

AIエージェントは、過去のやり取りや利用履歴を記憶することで、継続的に判断精度を高めます。しかし、メモリが適切に分離されていなければ、一度成功したプロンプトインジェクションが、その後の複数のセッションへ影響を及ぼす可能性があります。

汚染経路は一つではありません。RAGで利用するベクトルデータベースの情報源が汚染されていた場合はもちろん、利用者が直接アップロードしたデータや、信頼されすぎたデータパイプラインを通じて悪意ある情報が混入する可能性もあります。その結果、AIエージェントは誤った回答を生成したり、埋め込まれた指示を実行したりする恐れがあります。さらにマルチテナント環境では、共有コンテキストを介して一つのセッションから別のセッションへ影響が広がる可能性もあります。

こうした汚染は、比較的「一度の攻撃」として特定しやすいケースです。一方、より検出が難しいのがメモリドリフト(Memory Drift)です。

メモリドリフトは、一度の攻撃で知識を書き換えるものではありません。要約処理や他のAIエージェントからのフィードバックを通じて、時間をかけて知識や目標の重み付けを少しずつ変化させる手法です。

個々の変化だけを見ると、悪意ある操作なのか、それとも単なる要約表現の違いなのかを判断することは困難です。そのため、従来の異常検知では捉えにくく、AIエージェントの行動が本来の設計から明らかに逸脱し、偏りが顕在化した段階で初めて問題として認識されることも少なくありません。その時点では、すでに長期間にわたって影響が続いている可能性があります。

攻撃手法への後追い対応から、原則に基づく防御へ

ここまで5つの脅威を見て、「新しい攻撃手法が現れるたびに、その都度新しい対策を追加しなければならないのではないか」と感じた方もいるかもしれません。しかし、その考え方では企業は常に攻撃者の後を追い続けることになります。新しい攻撃手法はこれからも次々と現れ、そのたびに個別対策を積み重ねても終わりはありません。

本当に考えるべきなのは、「どのような新しい攻撃が現れても、防御の原則さえ守られていれば被害を最小限に抑えられるのではないか」という視点です。

例えば、サービスアカウントのアクセス権限を業務に必要な最小限の範囲だけに限定していた場合、そのアカウントが攻撃者によって異常な操作へ誘導されたとしても、影響範囲はあらかじめ限定されています。侵害そのものは防げなくても、被害を大きく拡大させないことは可能です。

Agentic AI時代に求められるのは、すべての侵害を防ぐことではありません。侵害が起きても重大な事故へ発展させない防御を設計することです。次回は、この考え方を実装へ落とし込むために、「7つの能力領域」と「3段階の成熟度モデル」を軸とした、防御フレームワークを解説します。

次回は、Agentic AI時代に企業が備えるべきセキュリティ設計について、8つの能力領域と3段階の成熟度モデルという観点から、実際に必要となる防御アーキテクチャを解説します。

参考資料:Palo Alto Networks Unit 42『2026 Global Incident Response Report』・World Economic Forum & KPMG『Empowering Defenders』・Verizon『2026 Data Breach Investigations Report』・BCG『2026 AI Radar』・Gartner『2026 Strategic Technology Trends』・OWASP GenAI Security Project『State of Agentic AI Security and Governance』・Center for Internet Security『Prompt Injections: The Inherent Threat to Generative AI』・MDPI『Information』プロンプトインジェクション攻撃に関する研究・Anthropic『Zero Trust for AI Agents』

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SEMI E187からAgentic AIガバナンスへ:半導体セキュリティの次なる焦点は設備だけではない

SEMI E187からAgentic AIガバナンスへ
半導体セキュリティの次なる焦点は設備だけではない

Profet AI・TAISYS Technologies・Zentera Systems・HPEの4社が見据える、Agentic AI時代の実践的なセキュリティ基盤

(左から)Profet AI グローバルセールスゼネラルマネージャー 余常任、HPE 副総経理 胡金雲 氏、Zentera Systems 台湾カントリーマネージャー 蔡穎碩 氏、Profet AI 創業者兼 CEO 黄建豪、TAISYS Technologies 研究開発マネージャー 吳金璋 氏、TAISYS Technologies 董事長 何俊炘 氏、Profet AI CEO特別補佐 楊建洲

半導体製造装置のサイバーセキュリティは、標準策定の段階から、調達・検証・サプライチェーン全体での実運用フェーズへと移行しつつあります

SEMI E187 の登場により、業界では半導体製造装置のサイバーセキュリティ要件を、より統一された基準で捉える動きが始まりました。半導体メーカーや装置サプライヤーにとって、サイバーセキュリティはもはや IT 部門が後から補強するものではありません。装置の設計・導入・運用・保守の各段階において備えるべき基盤的な要件となっています。

しかし、これはあくまで第一歩です。

AIエージェントが工場へ導入され、製造データを読み取り、MES・EAP・FDC・ERP と連携し、さらには業務の自律的な実行まで担うようになると、企業が直面するセキュリティ上の課題は「設備そのものが安全かどうか」だけではなくなります。

より重要になるのは、次のような問いです。

  • 誰が指示を出したのか。
  • その指示は人間によるものか、それとも AIエージェントが代理で実行したものか。
  • AIエージェントには適切な権限が付与されているのか。
  • どのツールを利用し、どのデータへアクセスし、どのシステムと連携したのか。
  • 異常な挙動が発生した場合、企業はリアルタイムでそれを遮断し、完全に追跡・監査することができるのか。

これこそが、Agentic AI がもたらす新たなガバナンス上の課題です。

SEMI E187が守るのは「設備」 しかし、AIエージェントの時代にはガバナンスの対象がさらに広がる

SEMI E187 の重要な意義は、半導体製造装置のサイバーセキュリティに対して、より明確な基準を示した点にあります。装置が高度にネットワーク接続された生産ノードとなる現在、装置自体が適切なセキュリティ対策を備えているかどうかは、生産ラインの安定稼働、事業継続性、さらにはサプライチェーン全体の安全性にも大きく影響します。

しかし、Agentic AI の登場によって、リスクの性質そのものが変わりつつあります。

これまでは、設備やシステムの多くを人が操作しており、アカウント・権限・ネットワーク境界・操作ログといった管理の仕組みも、人を前提として設計されていました。

一方、Agentic AI の時代において、AI は単に質問に回答する存在ではありません。人に代わってデータへアクセスし、ツールを呼び出し、システムと連携し、さらには複数のタスクをまたいで自律的に実行することも可能になります。

これは、企業が確認すべき対象は「設備そのものの安全性」だけではなく、「設備やシステムを利用する主体と、その行動の安全性」にまで広がることを意味します。

言い換えれば、SEMI E187 は設備セキュリティにおける重要な出発点です。しかし、AIエージェントが設備・データ・業務プロセスに深く関与するようになるこれからの時代には、企業はアイデンティティ・プラットフォーム・ネットワーク・AI実行基盤までを含めた、包括的なガバナンスアーキテクチャを構築する必要があります。

 

Agentic AI のリスクは、モデルそのものではなく「行動」にある

生成AIの導入初期において、企業が懸念していたのは、データ漏えいやハルシネーション、あるいは従業員が機密情報を外部ツールへ入力してしまうことでした。

こうしたリスクは現在も存在しています。しかし、Agentic AI の登場によって、新たな課題が浮上しています。

AIエージェントの最大の特徴は、「考える」だけでなく「実行できる」ことです。データを読み取り、タスクを理解し、ツールを呼び出し、業務フローを実行し、さらには状況に応じて次のアクションを自律的に判断することも可能です。

そのため、AIエージェントにシステムへの権限が付与されると、リスクは誤った回答だけにとどまりません。誤った操作、権限を超えたアクセス、許可されていないツールの利用、さらには企業が把握していない形で逸脱した行動を取る可能性へと発展する可能性があります。

だからこそ、Agentic AI におけるガバナンスは、モデルの安全性だけを対象とするものではありません。

企業が真に管理すべきなのは、次のような点です。

  • Agent のアイデンティティは信頼できるか。
  • Agent に付与された権限は、そのタスクに適したものか。
  • Agent はどのツールやデータへアクセスできるのか。
  • Agent の行動は、許可された範囲内で実行されているか。
  • Agent によるすべてのアクセス、実行、異常を記録し、追跡できる状態になっているか。

AI が単なるツールからデジタルワーカーへと進化するにつれ、ガバナンスの対象も「システムを守ること」から「AI の行動を管理すること」へと広がっています。

 

4層アーキテクチャ:意図から行動まで、AIエージェントを「制御可能・管理可能・監査可能」にする

Agentic AI 時代に対応するためには、個別のツールや単一のセキュリティ対策だけでは十分ではありません。企業には、それぞれが連携する包括的なガバナンスアーキテクチャが求められます。

第1層:アイデンティティ層 ― AI に指示を出している主体を明確にする

AIエージェントが人に代わって業務を実行するようになると、アイデンティティ管理は単にアカウントの認証可否を確認するだけでは不十分です。

重要なのは、その操作が人によって直接実行されたものなのか、それとも AIエージェントが代理で実行したものなのかを区別することです。AIエージェントによる操作であれば、誰を代理しているのか、どの部門や業務プロセスに属するのかを明確にする必要があります。また、高リスクな操作については、人による最終確認が必要かどうかも検討しなければなりません。

このレイヤーにおいて、TAISYS Technologies は信頼できるアイデンティティ管理と、Human-in-the-Loop による承認プロセスの構築を支援しています。AIエージェントが重要な操作を実行する際にも、人による確認ポイントを維持することで、利用者の意図が十分に確認されないまま機密性の高い処理が実行されることを防ぎます。

これは今後のスマートファクトリーにおいて特に重要です。AIエージェントが設備監視・データ参照・プロセス提案、さらには業務実行にまで関与するようになっても、人がすべてのシステムを直接操作する必要はありません。しかし、重要な意思決定や高リスクな操作については、人が最終的なコントロールを維持する必要があります。

第2層:プラットフォームガバナンス層 ― Agent の権限・ツール・行動を管理する

Profet AI が考える Agentic AI の本質は、AIエージェントそのものを構築することではなく、その運用とガバナンスをいかに実現するかにあります。

将来的に企業が利用する AIエージェントは一つではありません。部門ごと・業務ごと・工場ごと、用途ごとに複数の Agent が存在し、それぞれ異なるデータソースやツール、モデル、さらにはノウハウやスキル を利用することになります。

統一されたプラットフォームガバナンスがなければ、AIエージェントは新たな Shadow AI となりかねません。一見すると業務効率を向上させているように見えても、企業側では、どの Agent が稼働し、どのデータを利用し、どのツールを呼び出し、どのようなログを残しているのか、万が一の障害発生時にトレーサビリティを確保できなくなるリスクがあります。

Domain Twin™ の中核的な価値は、企業固有のドメインを起点として、データ・業務プロセス・know-how・権限・ツール・監査ログを統合できる点にあります。

このレイヤーで管理すべき対象は、対話内容だけではありません。モデル設定・ツールの利用・ナレッジベースへのアクセス・ACL・Guardrails・Tool Permission・Audit Log、さらには外部スキルや MCP ツールの安全性まで含めた、AIエージェントの実行環境全体を管理する必要があります。

AIエージェントには、業務を実行できる能力だけでなく、「何が許可されているのか」「何が許可されていないのか」、そして「なぜその行動を実行したのか」を理解し、追跡可能であることが求められます。

これは、製造業が AI を個別のユースケースから組織全体の運用能力へと発展させるうえで、最も見落とされやすく、同時に最も重要なレイヤーです。


第3層:ネットワーク層 ― 不正アクセスと逸脱行動を防ぐ

AIエージェントが設備・システム・データベース・各種アプリケーションと連携するようになると、ネットワークレベルのガバナンスも再設計する必要があります。

これまでは、企業内ネットワークは比較的信頼できるという前提が一般的でした。しかし、Agentic AI 時代において、その前提はより大きなリスクを伴います。AIエージェントは高い自律性と実行速度を持つため、過剰な権限が付与された場合や、誤った指示、悪意あるプロンプト、外部からの攻撃などの影響を受けた場合、リスクが短時間で拡大する可能性があります。

このレイヤーにおいて、Zentera Systems の Zero Trust アーキテクチャは重要な役割を果たします。その中核となる考え方は、信頼を前提とすることではなく、継続的な検証・最小権限・通信の追跡・異常時の遮断にあります。

プラットフォームガバナンスが AIエージェントの「あるべき行動ポリシー」を定義するのであれば、ネットワークガバナンスは、その Agent が実際にその経路どおりに動作しているかを検証する役割を担います。

  • Agent は許可されたシステムにのみ接続しているか。
  • アクセス権のないデータへアクセスしようとしていないか。
  • 横方向への不正な移動や未承認アクセスが発生していないか。
  • 異常が発生した場合に、速やかに隔離または遮断できるか。

こうした能力が備わっているかどうかが、企業が AIエージェントを重要な業務プロセスへ安全に組み込めるかを左右します。


第4層:AI実行基盤層 ― 安全・安定・管理可能な実行環境を支える

Agentic AI を企業運営へ組み込むためには、アプリケーション層だけでなく、その背後にある演算基盤・導入環境・運用基盤にも目を向ける必要があります。

HPE がこのアーキテクチャで担う役割は、SEMI E187 における設備要件へ直接対応することではありません。企業向けのコンピューティング基盤とインフラを提供し、AIエージェントがオンプレミス環境・エッジ環境、あるいは企業データセンター上で、安全かつ安定的に運用できる環境を支えることにあります。

AIエージェントが製造現場に近づくにつれ、企業は Agent のアイデンティティや権限だけでなく、AI ワークロードを支える基盤そのものについても、安全性・信頼性・運用性を確保しなければなりません。

半導体業界やハイテク製造業において、AI は導入して終わりではありません。長期にわたる運用・複数拠点での管理・安定した保守を前提としながら、セキュリティ・性能・可用性のバランスを維持することが求められます。

そして、こうした基盤こそが、AI を PoC から ROI の創出へと発展させるうえで、見落とされがちな重要な前提条件となります。

設備コンプライアンスから運用ガバナンスへ

半導体業界におけるAIセキュリティは次のフェーズへ

半導体業界では、現在二つの大きな潮流が交差しています。

一つは、設備セキュリティの標準化・調達要件化・適合性評価の進展です。SEMI E187 の策定により、製造装置には工場へ導入される前の段階から、より明確なセキュリティ要件を満たすことが求められるようになりました。

もう一つは、Agentic AI の普及です。AI はナレッジ検索や分析支援にとどまらず、製造プロセス・設備・各種システム、さらには業務オペレーションそのものへと関与する存在へ進化しつつあります。

こうした変化の中で、企業が向き合うべき問いは、もはや次のようなものだけではありません。

  • 設備そのものは安全か。
  • このAIモデルは十分な性能を備えているか。
  • このAIエージェントは期待どおりにタスクを実行できるか。

本当に重要なのは、AIエージェントが企業の重要資産へアクセスする際、その一連の行動を適切に統制・管理・監査できるかどうかという点です。

これは今後、半導体業界やハイテク製造業が重点的に取り組むべき課題となるでしょう。

AIエージェントは、品質異常の分析、設備状態の診断、プロセス条件の提案、技術課題の解決支援、工場間での知見共有、さらにはサプライチェーンや顧客との業務連携など、多様な場面で活用されることが期待されています。こうした用途では、企業が長年培ってきたノウハウや、高度に機密性の高い製造データを扱うことになります。

そのため、適切なガバナンス基盤が整備されていなければ、AI の能力が高まるほど企業が抱えるリスクも増大しかねません。

一方で、十分に設計されたガバナンス体制のもとで運用されれば、AI は企業の知識資産を拡張し、意思決定の迅速化や工場間の運用標準化を支える重要な経営基盤として、大きな価値を発揮することが期待されます。

Agentic AIの競争力を左右するのは、モデルではなく企業独自のDomain

製造業において真に価値を生み出すAIは、汎用モデルそのものではなく、企業が長年培ってきた独自のDomainに根ざしたものです。

蓄積されたデータ、業務プロセス、設備運用の知見、異常対応のノウハウ、エンジニアの判断基準・品質管理の経験・さらには工場間で培われた展開ノウハウ。こうした資産こそが、企業競争力の源泉と言えます。

そのため、Agentic AI において重要なのは、企業のノウハウを外部ツールへ委ねることではありません。むしろ、それらの知見をガバナンス可能かつ再利用・追跡可能な「AI 資産」へと転換し、自社で完全に管理することが求められます

これこそが、Domain Twin™ の中核となる考え方です。

Domain Twin™ は、人材・設備・業務プロセス・システムに分散して存在する現場のノウハウを、適切にガバナンスでき、再利用可能なAI 資産へと体系化することを目指しています。AIエージェントt が企業固有のDomainに基づいて稼働し、さらにアイデンティティ・権限・ツール・ネットワーク・インフラストラクチャといった各レイヤーで適切な統制を受けることで、AIは単なる個別ツールではなく、実際の業務を支える運用基盤として機能するようになります。

製造業にとって、これは単なる技術導入ではありません。企業の知識資産を将来へ継承し、自社の競争力とコントロール性を維持・強化するための重要な取り組みと言えるでしょう。

SEMI E187は出発点、Agentic AIガバナンスは次のステップ


SEMI E187 が業界に示したのは、設備のセキュリティは設計段階から考慮すべきであるという考え方です。

一方、Agentic AI の普及は企業に対し、AI が業務の実行や意思決定に関与する時代においては、ガバナンスも導入前から設計しておく必要があることを示しています。

両者は対立する概念ではなく、相互に補完し合うものです。

SEMI E187 が設備そのものに求められるセキュリティ基盤を定義する一方で、Agentic AI 時代にはさらに、アイデンティティ管理・プラットフォームガバナンス・ネットワーク保護・AI 実行基盤といった多層的なガバナンス体制を構築し、AIエージェントの意図から実際の行動までを適切に統制・監査できる環境が求められます。

今後の半導体工場では、人・AIエージェント・設備・システムがこれまで以上に密接に連携していくでしょう。人が重要な判断や最終承認を担い、AIエージェントがデータやツール、業務プロセスを横断的に連携し、設備やシステムが高度でリアルタイムな生産活動を支える――そのような運用が一般的になっていくと考えられます。

こうした環境で企業に必要なのは、AI ツールを増やすことではありません。AI を安心して業務へ組み込むための、確かなガバナンス基盤です。

AIエージェントは高い処理能力と自律性を備えています。しかし、自律性が高まるほど、機能だけでは十分とは言えません。実運用に耐え得るAgentic AI には、適切な権限管理・統制・トレーサビリティ・監査性が不可欠です。

これこそが、半導体業界やハイテク製造業において、AI を PoC の段階から ROI の創出へとつなげる重要な鍵になるでしょう。

Profet AI は、Domain Twin™ を通じて、製造業における 「制御可能・管理可能・監査可能」 な Agentic AI ガバナンス基盤の構築を支援しています。AI を概念実証にとどめることなく、安全かつ持続的に実運用へ展開したい企業や、AIエージェントの導入や SEMI E187 を見据えたセキュリティ対策をご検討中の企業は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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製造AIを現場の力に:Profet AIが導く、GIS(業成)のDX社会実装

製造AIを現場の力に:
プロフェト AIが導く、GIS(業成)のDX社会実装

2年間で100以上のAIプロジェクト完遂、1,500以上のモデルを構築。
プロセスの「点」の改善から「工場間横断の複製」へと昇華

高付加価値コンシューマー電子機器のサプライチェーン競争激化、世界的なサプライチェーンの分散、そしてオペレーショナル・レジリエンス(事業継続の強靭性)への要求が高まる中、製造業向けAIソフトウェアのリーディングカンパニーである Profet AI と GIS(業成) はパートナーシップをさらに深化させました。

これにより、GISにおけるAI活用を、製造現場の歩留まり・品質・効率の改善という「点の取り組み」から、「複数プロセスを横断した知見の抽出、モデル化、そして組織能力(組織ケパビリティ)の構築」という「面の展開」へと大きく推進させました。

両社の協業開始から約2年間で、すでに 100以上のAIプロジェクトを完遂し、1,500以上のAIモデルを構築。これらは、製造プロセスの改善、品質分析、異常予測など、多岐にわたる製造シナリオを網羅しています。Profet AIのプラットフォームと導入メソッドを活用することで、GISは単一ラインの課題解決にとどまらず、AIをエンジニアリングチームが継続的な改善と意思決定を行うための「標準的なワークスタイル」へと定着させることに成功しました。

顧客ニーズからサプライチェーン競争まで:AIは製造業のアップグレードにおける「鍵」

GISの董事長兼最高戦略責任者である周賢穎氏は、AI導入を始動した背景について、AI技術の急速な発展だけでなく、品質・納期・レスポンス速度に対する顧客からの要求水準が高まっていることが密接に関係していると説明します。ハイエンドなコンシューマー電子機器のサプライチェーン競争が激化する中、企業が競争力を維持するためには、サプライチェーンの分散化が進む環境下でも、オペレーション能力を絶えず向上させなければなりません。

周氏は次のように指摘します。

「AI導入は、単に技術的なトレンドを追うことではありません。最も重要なのは、それが『会社の経営・現場のオペレーションに真に組み込まれ』、品質、納期、対応スピードの継続的な改善に寄与し、ひいては顧客やサプライチェーンへのサービス能力をより高められるかどうかなのです」

また同氏は、近年の地域サプライチェーンの急速な台頭により、各国や企業がサプライチェーンの安全とレジリエンスをより重視するようになっていると分析。製造企業にとっての要諦は、単に異なる地域にどう拠点を配置するかだけでなく、「AIを通じていかに品質、スピード、そして総合的な競争力を引き上げるか」にあると強調します。

100以上のAIプロジェクトが着地:製造プロセス改善の「限界」を再突破

具体的な成果において、GISはAIを活用することで、過去に「これ以上の改善は限界に近い」と見なされていたプロセスデータを再検証し、さらなる改善の余地(ポテンシャル)を掘り起こしました。

例えば、ある光学ディスプレイフィルムの生産ラインでは、かつて微小異物(パーティクル)の付着による不良率が10%近くに達していました。しかし、Profet AIの支援のもとでモデルを構築し、重要因子)を分析してプロセス調整を行った結果、当該の不良率はほぼゼロにまで改善されました。また、別のコーティング工程における気泡問題では、従来0.3〜0.4%程度だった不良率が、AIの分析と改善を経て約0.2%へと半減しました。

これらの成果の本質的な価値は、単に数字が改善されたことだけではありません。現場のエンジニアリングチームが、「一見安定しており、目標を達成しているように見えるプロセスであっても、AIとデータ分析を用いれば、まだ新たな最適化の余地が見つかる」という事実を再認識した点にあります。

SOPから「複数プロセス間の相関関係」へ:熟練エンジニアの経験を複製可能な能力へ

従来、製造現場における改善は、ベテランエンジニアが長年の経験で培った「勘と経験」に依存し、それを標準作業手順書(SOP)に落とし込む方法が一般的でした。しかし、従来のSOPの多くは単一の工程や単一のプロセス内にとどまるものが多く、問題が複数のプロセスにまたがる複合的な因果関係(相関関係)に及ぶ場合、どうしてもベテランエンジニアの属人的な判断に頼らざるを得ませんでした。

Profet AIとの協業を通じて、GISは各工程で蓄積された製造データとノウハウを「AIモデル」へと昇華させました。これにより、エンジニアチームがプロセス間の隠れた相関関係を特定できるようになり、プロセスの改善活動を『個人の経験依存』から『システムを通じて継続的に蓄積・複製・伝承できる組織の能力』へと転換させました。

周氏は語ります。

「以前は、多くの改善が優秀なエンジニアやベテランエンジニアの力に頼っていました。なぜなら、彼らだけがプロセス横断的なノウハウを持っていたからです。AIの大きな価値は、これらプロセス間の相関関係を洗い出し、モデル化・言語化(可視化)してくれることにあります。これにより、プロセスの改善が『人頼み』から『モデル頼み、システム頼み』へとシフトしていくのです」

Profet AIが提供するのは単なる「ツール」ではなく、「内製化のためのメソッド」

プロフェト AIを選定した理由について、周氏は、プロフェト AI のチーム自体が製造業のバックグラウンドを持ち、関連産業における豊富な導入実績を有している点を高く評価したと述べます。さらに重要な点として、プロフェト AI は単一のプロジェクトを完了させるだけのベンダーではなく、企業が自社内でAIを使いこなす能力(内製化ケパビリティ)を育てるための「プラットフォーム」と「メソッド(導入手法)」を提供してくれる点を挙げました。

周氏はこの協業プロセスを「産学連携(インターンシップ)のようなものだった」と振り返ります。GISのチームはまず、プロフェト AIから「AIをいかに生産・製造プロセスへ導入するか」の基礎を学び、その上で共に改善テーマを探索。GISの社内チームとプロフェト AIのコンサルティングチームが伴走しながら、学習から実社会実装(ランディング)までのプロセスを共に完遂しました。

「プロフェト AIは、私たちに『魚(一時的な成果)』だけをくれるのではなく、『魚の釣り方(内製化の手法)』を教えてくれるパートナーです。このプロセスを通じて、私たちは会社の中に独自の改善ノウハウと、AIを活用する文化を定着させることができました。」

プロフェト AIの共同創業者兼CEOである黃建豪氏は、製造業におけるAIの価値はモデルを構築すること自体ではなく、そのモデルを「企業が持続可能に運用できる能力」へと昇華させられるかにあると指摘します。

「真の製造業向けAIとは、単発のプロジェクトや一過性の改善で終わるべきではありません。現場のノウハウを管理可能・複製可能、そして拡張可能な『企業のAI資産(AIアセット)』へと転換することです。GIS様の事例は、まさにAIが単一のプロセス改善から、組織が継続的に進化するための方法論へと発展した最高のロールモデルです。」

今回の協業を通じて、プロフェト AIとGISは、製造業におけるAIの導入が「プロジェクト単位の導入」から「プロセスの改善」、そして最終的に「組織能力の構築」へと至る完全なロードマップを証明しました。

グローバル製造業がサプライチェーンの再編、熟練工の技術伝承、オペレーション効率の向上といった課題に直面する中、現場の経験を保存・拡大・複製可能な「ドメイン・ツイン(Domain Twin)」へと転換していくアプローチは、今後の企業がAIの社会実装を果たし、長期的な競争力を高める上での最重要戦略となるでしょう。

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2026年、AI活用元年へ ー「J.A.R.V.I.S.」は現実になるのか? 製造業で始まるAIエージェント革命

2026年、AI活用元年へ

「J.A.R.V.I.S.」は現実になるのか? 製造業で始まるAIエージェント革命

映画『アイアンマン』で、Tony Stark が「J.A.R.V.I.S.、Mark 5 の装甲耐性を分析して、必要なチタン素材を手配してくれ」と自然に指示を出すシーンは、多くの人にとって“未来のAI”を象徴する存在でした。

そして2026年、その世界観は現実へと近づき始めています。

その象徴の一つが、GitHub上で急速に注目を集めているオープンソースAIエージェント「OpenClaw.ai(旧 Clawdbot)」です。
短期間で14万件以上のスターを獲得したこのプロジェクトは、従来の生成AIが抱えていた「会話はできても、業務は実行できない」という限界を大きく超えました。

OpenClaw は、単なるチャットAIではありません。
ブラウザ操作、レポート確認、メール処理、情報収集までを自律的に実行し、“デジタル社員”として動き始めています。

「対話AI」から「実行AI」へ:AIエージェント時代が本格化

BCG の『2026 AI Radar』によると、世界のCEOの90%が「AIエージェントは2026年に実質的なROIを生み出す」と回答しています。

さらに Gartner は、「Multiagent Systems(マルチエージェントシステム)」を2026年の戦略的テクノロジートレンドの最重要領域の一つに位置づけました。

つまり、AIは、“支援ツール”から、“自律的に判断・連携・実行する存在”へと進化し始めているのです。

製造業においても、DXの論点は大きく変わりつつあります。

これまでのテーマは、「従業員がAIをどう使うか」でした。
しかし今後問われるのは、「AIをどう配置し、どう運用し、どう管理するか」です。

つまり、競争軸は Prompt Engineering から、“AI Workforce Design”へと移行し始めています。

OpenClawブームの裏側

製造現場は“自律型AI”を受け入れる準備ができているか

OpenClaw の急成長は、世界中の企業が「AIにもっと実務を任せたい」と考え始めていることの表れでもあります。

24時間設備を監視し、異常を検知し、朝にはサマリーレポートを自動生成する。
まさに J.A.R.V.I.S. のような働き方です。

しかし、精密性・安定性・セキュリティが求められる製造業では、別の問いも浮上します。

「高い自律性を持つAIを、本当に工場へ導入してよいのか?」

特に OpenClaw のような OSS(オープンソースソフトウェア)型AIエージェントは、“高権限”と“自由度”を強みにする一方で、企業運用上のリスクも抱えています。

1. 「Root権限」が生むセキュリティリスク

OpenClaw は高度な自動化を実現するため、Root権限やシステム内部への深いアクセスを必要とするケースがあります。

一部のセキュリティ専門家は、この状況を
「家の鍵を酔ったインターンに渡すようなもの」
と表現しています。

実際、SecurityScorecard が2026年2月に公開した調査では、インターネット上で公開されている OpenClaw 環境の63%に脆弱性が確認されたと報告されています。

設定ミスひとつで、AIエージェント自体が“内部侵入口”になり得るのです。

2. 「Indirect Prompt Injection」という新たな攻撃

従来のチャットAIは、ユーザーが直接入力した指示に対して反応していました。

しかし OpenClaw のようなAIエージェントは、Webページやメールを自律的に読み込みます。

そこで新たに問題視されているのが、「Indirect Prompt Injection(間接プロンプトインジェクション)」です。

たとえば、悪意ある命令を埋め込んだWebページをAIが読み込んだ場合、ユーザーが気づかないまま、内部情報の送信や不正操作を実行してしまう可能性があります。

これは従来型のサイバー攻撃とは異なり、“AIの思考プロセスそのもの”を汚染する攻撃だと言えます。

3. 未審査プラグインによるサプライチェーンリスク

OpenClaw の特徴の一つが、「Skills」と呼ばれる拡張機能エコシステムです。

ユーザーはコミュニティ経由で多様な機能を追加できますが、その一方で、サードパーティ製スキルの安全性は完全には保証されていません。

一部調査では、短期間で400件以上の悪意あるパッケージが確認され、その中には Cookie・SSHキー・クラウド認証情報を窃取するコードも含まれていたと報告されています。

知的財産や製造ノウハウを扱う企業にとって、これは極めて重大なリスクです。

4. エンタープライズ運用を前提としないガバナンス構造

OpenClaw は「ノーコード」を掲げていますが、実際には Docker・Python・環境依存設定など、高度な技術理解を求められる場面も少なくありません。

さらに企業視点でより重要なのは、「AIがなぜその判断をしたのか」を追跡できるかどうかです。

たとえばAIが購買条件を変更した場合、

  • 誰が承認したのか

  • どの判断ロジックに基づいたのか

  • どのデータを参照したのか

これらが記録されていなければ、監査・責任追跡・内部統制の観点で大きな課題となります。

実験から運用へ
製造業に求められる「Agentic AI基盤」

OpenClaw は、AI自動化の可能性を市場に示しました。

しかし製造業で本当に必要なのは、「個人向けAIツール」ではありません。
“工場運営に耐えうるAI基盤”です。

Profet AI の AI Studio は、まさにこの課題に対応するため、ガバナンス・監査性・知識継承を前提とした設計を採用しています。

1. ガバナンスを前提とした権限管理

AI Studio では、「Authorization Action Role」によってAIエージェントごとの操作範囲を明確に定義します。

ERPやMES、文書管理システムとの連携も、許可されたAPI経由のみで実行され、すべてのアクションは監査ログとして記録されます。

これにより、AIの実行プロセスを後から追跡できる“Explainability”と“Traceability”を実現します。

2. Domain Twin™ による現場ノウハウの継承

製造業の本当の競争力は、「現場ノウハウ」にあります。

AI Studio の中核となる Domain Twin™ は、熟練技術者の調整ロジックや品質判断を、継続学習可能なデジタル資産へ変換します。

例えば:

  • CMP工程における研磨条件調整
  • 金属使用量と歩留まりの最適バランス
  • 不良兆候の経験的判断

こうした暗黙知を、AIが再利用可能な知識として継承していきます。

3. ノーコードによる高速導入

製造現場に必要なのは、“複雑な開発”ではなく、“短期間で成果につながる運用”です。

AI Studio はノーコード型ワークフロー設計を採用し、現場主導でのAI導入を可能にします。

OSS運用で発生しやすい依存関係・環境構築・保守負債を最小限に抑え、企業はROI創出に集中できます。

2026年、AI競争は次のフェーズへ

J.A.R.V.I.S. のようなAIは、もはや映画の世界だけの話ではありません。

OpenClaw が示したのは、「AIが実際に働く時代」の始まりです。

しかし製造業において重要なのは、“自由に動くAI”ではなく、“制御可能なAI”です。

BCG の調査では、世界の90%のCEOが2026年中にAIエージェントによるROIを期待しています。

今後の競争を決めるのは、AI導入の早さではありません。
現場知識を資産化し、ガバナンスとともに継続運用できる企業こそが、次世代の競争優位を築いていくことになります。

Profet AI の AI Studio は、そのための「AI運用指揮基盤」として、製造業のAI実装を支援していきます。

2026年、AI活用元年へ ー「J.A.R.V.I.S.」は現実になるのか? 製造業で始まるAIエージェント革命 続きを読む »

「面白いAI」から「使われるAI」へ―なぜ2026年、企業はGenAIのPoCを飛び越え始めたのか

「面白いAI」から「使われるAI」へ

なぜ2026年、企業はGenAIのPoCを飛び越え始めたのか

過去2年間、生成AIは企業におけるPoC(概念実証)ブームを巻き起こし、チャットボットや検索支援、文章生成など、さまざまなユースケースが急速に広がりました。

しかし2026年に入り、企業のAI導入には明確な変化が生まれています。

もはや「PoCを実施すること」自体が目的ではなく、AIをいかに実際の業務プロセスへ深く組み込み、継続的な業務価値へ転換できるかが、企業にとって最優先課題となっているのです。

2026年2月に公開された『International AI Safety Report 2026』では、新たなリスクとして「Goal Misalignment(目標不整合)」が指摘されました。
これは、AIへ与える目標や制約条件が曖昧な場合、人間の本来の意図とは異なる方向でAIが最適化を行い、意図しない行動や高リスクな判断を引き起こす可能性があるというものです。

今後のAI活用において重要なのは、「AIが何をできるか」だけではありません。
「どのような目的・制約・判断基準をAIへ与えるか」が、これまで以上に重要になります。

AIを安全かつ継続的に運用するためのガバナンス設計は、いまや企業にとって避けて通れない経営課題となりつつあります。

市場は拡大する一方、成功のハードルは高まる

AI実装の難易度が高まる一方で、Agentic AI市場への期待は急速に高まっています。

調査会社  Precedence Research の予測によればAgentic AI市場は2034年までに1,990億米ドル規模へ成長すると予測されています。

しかし今後、企業競争力を左右するのは、「AIを導入したかどうか」ではありません。
「AIを前提に業務運営そのものを再設計できるかどうか」です。

従来の単発的なPoCアプローチでは、全社展開や継続的な価値創出に至らないケースが数多く見られました。
これから企業に求められるのは、単なる自動化ではなく、目標設計・権限管理・セキュリティ・監査性までを含めた、“システムとしてのAI運営”を構築することです。

従来の単発的なPoCアプローチでは、全社的な運用や継続的な価値創出に至らないケースが多く見られました。これからの企業に求められるのは、単なる自動化ではなく、目標設計・権限管理・セキュリティを含めた「システムとしてのAI運営」の構築です。

Domain Knowledge (現場知識)がAIの成否を分ける

特に製造業では、重要な判断基準やノウハウが、ベテラン技術者個人に属人化しているケースが少なくありません。
その結果、AIが十分な判断根拠を持てず、現場で実用レベルに到達できない状況が発生しています。

McKinsey & Company の調査でも、独自データや業務知識をAIへ統合できている企業は、同業他社と比較して25%高い利益成長ポテンシャルを持つと報告されています。

つまり、企業競争力の源泉は「汎用AIモデル」ではなく、「企業内部に蓄積された know-how」にあるということです。

Profet AI の Domain Twin™ は、こうした現場ノウハウや意思決定ロジックを、再利用可能なデジタル資産として構造化するアプローチです。
属人的だった判断をAIが継承することで、意思決定の再現性・一貫性・トレーサビリティ向上を支援します。

「使える」から「信じて使える」へ
― ガバナンスが意思決定の鍵

AIエージェントが単なる提案支援に留まらず、システムへ直接アクセスし、実際の業務を遂行するようになるにつれ、企業が重視するポイントも変化しています。

その中心は、「利便性」から「制御可能性(Controllability)」へのシフトです。

「デジタル社員」にも評価期間が必要

たとえば、企業が「受発注メールを整理するAIアシスタント」を導入したケースを考えてみましょう。

ブラックボックス化のリスク

もしAI Agentへ過剰な権限が付与されていた場合、悪意あるプロンプトインジェクション攻撃によって、不正なデータ送信や機密情報漏洩が発生するリスクがあります。

また、監査機能が不十分な環境では、異常行動の検知が遅れ、問題発覚までに時間を要する可能性もあります。

Zero Trustによる行動制御

一方で、Zero Trustアーキテクチャを採用した場合、AIエージェントの通信・アクセス・挙動は常時検証対象となります。

Cloud Security Alliance(CSA)が提唱する「Agentic Trust Framework 」でも、「AI Agentを継続的な検証対象として扱う」という考え方が重視されています。

AIもまた、“デジタル社員”として、段階的に信頼と権限を付与していくべき存在になりつつあるのです。

未来の工場は「自動化」から「AI協調」へ

今後の製造現場では、単一AIによる自動化ではなく、複数のAIエージェントが連携する「協調型AI運用」が主流になると考えられています。

その実現には、「知識基盤」と「セキュリティ基盤」の両立が不可欠です。

Profet AI と Zentera Systems は、この課題に対し、AIとセキュリティを統合した階層型ソリューションを提供しています。

アプリケーション層の知識基盤(Profet AI)

Profet AI は、「Domain Twin™」および「AI Studio」を通じて、熟練者の経験や現場知識をデジタル化。

現場文脈を理解できるAIエージェントの構築を支援しています。

実行層のZero Trust基盤(Zentera Ensage AI)

Zentera Systems の「Ensage AI」は、AIエージェントの通信や挙動をリアルタイムで監視。
既存のIT/OTインフラを大きく変更することなく導入でき、製造業が求める低遅延・データ主権・運用安定性を担保します。

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北科大 × Profet AI、バンコクで「AI理論から価値実践へ」フォーラムを開催

北科大 × Profet AI
バンコクで「AI理論から価値実践へ」フォーラムを開催

製造現場におけるAI活用と Domain Twin™ の実践知を共有

2026年3月7日、国立台北科技大学タイEMBA校友会は、バンコクにて「AI理論から価値創出へ」フォーラムを開催しました。

本フォーラムには、国立台北科技大学 管理学院院長・范書愷教授、および Profet AI(杰倫智能)CEO特別補佐 James Yang 氏が登壇。Delta Electronics Thailand、Cal-Comp Electronics、Chicony Electronics など、タイに進出する台湾系製造企業を中心に、約100名の経営層・技術者が参加し、製造業におけるAI活用と実装戦略について活発な議論が行われました。

世界的なサプライチェーン再編と東南アジアにおける製造拠点拡大が進む中、AIは生産性向上や品質管理高度化を支える重要技術として注目を集めています。本フォーラムでは、「AI理論から価値創出へ」をテーマに、学術研究・産業トレンド・実際の導入事例という3つの視点から、AIがどのように製造現場へ浸透していくのかについて議論が交わされました。 

製造現場で進むAI活用

前半セッションでは、范書愷教授がスマート製造領域におけるAI研究成果を紹介しました。

マルチモーダルLLMを活用した不良検知・異常診断や、AIエージェントによるエンジニア業務支援など、具体的な応用事例が共有されました。

画像・言語・製造データを統合することで、AIが製品不良を自動識別し、その要因分析まで実施できるようになり、品質検査効率の大幅な向上が可能になると説明。また、ERPシステムとの連携により、メール内容を構造化データへ変換し、自動的に受発注フローへ反映させるなど、業務自動化の可能性についても紹介されました。

范教授は次のように述べています。

「企業がAI導入によって真の価値を生み出すためには、単にモデルを導入するだけでは不十分です。AIを企業の中核システムや業務プロセスへ深く組み込み、AIエージェントが意思決定や実行に関与してこそ、本当の価値が生まれます。」

Domain Twin™:熟練者の知見を「企業の資産」へ

後半では、Profet AI の James Yang 氏が、企業向けAIプラットフォームの実装経験と、「Domain Twin™」のコンセプトについて紹介しました。

Domain Twin™ は、企業内に蓄積された専門知識や意思決定ノウハウを、管理可能・再利用可能・進化可能なAI能力へ変換するコンセプトです。グローバル展開や海外工場立ち上げ時にも、本社の know-how を迅速に展開・継承できる仕組みとして注目されています。

James Yang 氏は、グローバル化と少子高齢化が進む中、製造業は次の3つの課題に直面していると説明しました。

  • 熟練技術者への依存からの脱却(ノウハウのデジタル化)
  • 海外拠点への技術移転の迅速化(本社知見の再現)
  • 若手エンジニア育成の加速(生産能力拡大への対応)

こうした課題に対し、Profet AI は Domain Twin™ を通じて、企業内 know-how の蓄積・継承・展開を支援しています。

Profet AI は、AutoML による製造予測モデル構築、AILM(AI Lifecycle Management)によるAIガバナンスおよび知識管理、さらに AI Studio によるAIアプリケーション化を通じ、企業内 know-how を日常業務へ組み込む仕組みを提供しています。

これらのモデルはAIエージェントとして現場で利用可能となり、品質分析、異常診断、設備保全などをリアルタイムで支援。AIを単なる分析ツールではなく、日常業務に組み込まれた“業務パートナー”として活用するアプローチが紹介されました。

James Yang 氏は次のように述べています。

「製造業の真の競争力は、現場に蓄積された Domain Know-how にあります。Domain Twin™ の目的は、熟練者の経験やベストプラクティスをAIへ変換し、企業全体で継承・拡張・再利用できる状態をつくることです。」

AI導入による実際の生産ライン改善

フォーラムでは、Profet AI の製造業導入事例についても共有されました。

AutoML を用いて製造予測モデルを構築した結果、塗装品質へ影響を与える主要因として、製品重量・塗料配合比率・湿度条件などが特定されました。

AIモデル導入後は、パラメータ最適化を通じて、

  • 生産ライン効率:約15%向上
  • 製品不良率:約35%削減

といった成果が確認され、AIが単なる理論に留まらず、実際の製造現場で具体的な価値を生み出していることが紹介されました。

また、AI Studio を通じてこれらのモデルをAIエージェントとして業務フローへ統合することで、現場エンジニアがより迅速かつ正確に問題分析や意思決定を行える環境も実現されています。

【会場Q&A】製造業が求めるAI実装の現実解

フォーラム終盤のQ&Aセッションでは、参加した企業の経営層やエンジニアから多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。

参加企業からは、「AIを導入しなければ将来的な競争力に影響するのではないか」といった危機感や、現場での具体的な導入ステップに関する関心も多く寄せられました。

これに対し登壇者たちは、AI導入は“最初から大規模なAI組織を構築すること”ではなく、“最も重要な課題から着実に取り組むこと”が重要だと説明。特に、品質改善や歩留まり向上など、成果を可視化しやすいテーマから着手することで、持続可能なAI活用につながると語りました。

James Yang 氏はQ&Aの中で次のように締めくくりました。

「企業がAI導入を進める上で、ゼロから高度な技術チームを構築する必要はありません。重要なのは、自社にとって本当に解決すべき課題を見極めることです。AIが生産性、品質、意思決定スピードの向上に直結したとき、それは単なる技術ではなく、企業競争力そのものになります。」

本フォーラムは、最新のAIトレンドだけでなく、現実的な導入ステップや現場活用の具体例までを提示し、タイに進出する製造業各社の高い関心を集めるイベントとなりました。

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Profet AI、タイ PSTC Academy と提携

Profet AI、タイ PSTC Academy と提携

越境型AI人材育成とデータセンター運用の高度化を推進

左:PSTC Academy Group CEO Poramet Ruangnoo氏 右:Profet AI CEO特別補佐 陳星光

【2026年4月23日・台北】— 製造業向けAIソリューションを提供するProfet AI(日本プロフェトAI株式会社)は、タイのPSTC Academyと提携し、越境型AI人材育成、実践型トレーニング・認証制度の構築、およびデータセンター運用におけるAI活用推進に向けた戦略的協業を開始したことを発表しました。

本提携では、Profet AIが持つ企業向けAI導入および産業現場での実装ノウハウと、PSTC Academyのデータセンター施設管理、クラウドインフラ教育、コンサルティング領域における専門性を組み合わせます。人材育成から実導入・運用までを見据えた、実践的なAI活用モデルの構築を目指します。

人材育成分野において、両社はAIトレーニング、実務応用、国際認証を組み合わせた越境型育成モデルを共同で推進します。Profet AIは、Domain Twin™プラットフォームを活用した実践トレーニングを提供し、受講者がAIツールの操作、モデル構築、実運用シナリオの理解まで、産業ニーズに即したスキルを習得できる環境を支援します。

一方、PSTC Academyは、教育プログラムおよび認証制度構築の知見を活かし、実務重視かつ標準化された教育プログラムの共同開発を進めていきます。

また両社は、AIを活用したデータセンター運用の高度化にも取り組みます。Domain Twin™を活用することで、UPS(無停電電源装置)、冷却設備、発電機などの重要インフラに対する予兆保全(Predictive Maintenance)を実現。リアルタイム監視と異常検知を通じて、インフラの安定性および運用効率の向上を目指します。

さらに両社は、「AI as a Service(AIaaS)」モデルの実現可能性についても検討を進めています。これにより企業は、データセンターの物理インフラだけでなく、事前統合されたAI環境を通じて、AIモデル構築やAIエージェント活用機能を迅速に利用可能となることが期待されています。

Profet AI 共同創業者 兼 CEO 黄建豪 コメント:

「AIを企業に根付かせるためには、単なるツール導入だけでは不十分です。人材育成からスキル認証、そして実運用までを一貫してつなぐエコシステムが不可欠だと考えています。

PSTC Academyとの提携を通じて、AIの『学習・認証・実装』をより密接に結び付け、企業が再現性のあるAI活用を推進できる環境を提供してまいります。」

PSTC Academy Group CEO Poramet Ruangnoo氏 コメント:

「AI、クラウド、データセンターインフラが急速に進化する中で、実践力と業界理解を兼ね備えた人材への需要はますます高まっています。

今回の提携は、AI教育・認証・インフラ活用をより強固に結び付け、地域市場におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)需要へ応える重要な取り組みになると考えています。」

AIが企業の中核業務へ急速に浸透する中、人材・プラットフォーム・インフラを横断的に統合する力が、AI導入を成功へ導く重要な鍵となっています。

Profet AIとPSTC Academyは今回の提携を通じて、台湾および東南アジア市場に向け、より実践的かつ拡張性の高いAI活用モデルの構築を推進していきます。

Profet AI について

Profet AIは2018年創業の、製造業に特化したAIソフトウェア企業です。現場の経験や専門知識を、蓄積・拡張・継承可能な「Domain Twin™」へ変換することをミッションとしています。

現在、アジア300社以上の製造業企業へ導入されており、電子・半導体・PCB・IC設計・ディスプレイパネル・先進材料など幅広い業界で活用されています。単一生産ラインから複数工場、さらにはグローバル拠点運営まで、よりスマートで拡張性の高いオペレーションの実現を支援しています。

PSTC Academy について

PSTC Academyは、タイを拠点とする教育・コンサルティング機関です。データセンター、クラウド、およびAIインフラ分野に特化し、2022年の設立以来、専門トレーニング、認証プログラム、デジタルインフラ開発に関するコンサルティングサービスをアジア太平洋地域で展開しています。

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Profet AI、国立台北科技大学と「Domain Twin Co-Lab」を開設

Profet AI、国立台北科技大学と「Domain Twin Co-Lab」を開設

Domain Twin™ を通じて、次世代AI人材育成を加速

 

Profet AI(日本プロフェトAI株式会社)は、国立台北科技大学 管理学院とMOU(協力覚書)を締結し、同校初となるアカデミック寄贈プロジェクト「Profet AI Domain Twin Co-Lab(産学共創拠点)」を開設したことをお知らせいたします。

本プロジェクトにおいて、Profet AIは自社開発の「Domain Twin™」プラットフォームを、教育・研究リソースとして寄贈します。学生が次世代AI活用のトレンドにいち早く触れ、AIとの協業、業務フロー理解、AIアプリケーション開発の実践力を養うことで、産業界のニーズに即した人材育成を目指します。

また、本提携は、AIの産業応用・学術研究・人材育成・産学連携といった幅広い領域を対象としています。

左:Profet AI R&D責任者 陳家豪 右:国立台北科技大学 管理学院院長 范書愷 教授

今回の取り組みは、Profet AIにとって初となる大学向け寄贈プログラムです。AIの役割が「コンテンツ生成」から「タスク実行」へと移行する中で、企業が求める人材像も大きく変化しています。

単にAIツールを使いこなすだけではなく、AIがどのように業務プロセスへ入り込み、知識やシステムと連携しながら、実際の業務現場で実行力を発揮できるかを理解する力が、これまで以上に重要視されています。

Profet AIは今回の連携を通じて、次世代AI時代に求められる思考力と実装力を、教育・研究現場へ早期に届けることを目指しています。

Profet AIのDomain Twin™プラットフォームは、AutoMLとAgentic AIの機能を備えています。従来のAIツールがQ&Aや検索といった単一的な支援に留まるのに対し、Domain Twin™は「回答」に留まらず、「実行」まで担うAI活用を実現します。

AIエージェント、ワークフロー構築、自律型プロセス管理、ツール連携を支援することで、将来の業務環境に直結した活用を可能にします。また、高度なガバナンス機能とセキュリティ機能を備えており、企業がAgentic AIを導入する際に直面するガバナンスや統制性の課題にも対応しています。

今回の提携は、両者の長年にわたる強固な信頼関係に基づくものです。国立台北科技大学 管理学院院長の范書愷教授は、長年にわたりProfet AIの顧問を務めており、これまでもProfet AIのAutoMLを活用した実際の産業事例をもとに、共同でカリキュラムを展開してきました。

学生たちは、AIツールそのものだけではなく、企業が抱えるリアルな課題に対してAIをどのように応用すべきかを学んできました。今回の提携により、その対象領域はAgentic AIへと拡大します。単なる授業連携に留まらず、包括的な学術協力と人材育成ロードマップの構築を進めていきます。

国立台北科技大学 管理学院院長 范書愷教授 コメント

「AIの進化は、コンテンツ生成の段階から、理解・推論・行動を伴うAgentic AIへと急速に移行しています。今回の提携の意義は、学生が新しいツールに触れることだけではありません。

AIが今後、業務フローや知識基盤、意思決定プロセスへどのように組み込まれていくのかを、早い段階で理解できる点にあります。本取り組みを通じて、学生たちが領域横断的な統合力と実践力を身につけ、アカデミアと産業界のより実質的な連携が深まることを期待しています。」

Profet AI 共同創業者 兼 R&D責任者 陳家豪 コメント

「これからの時代に求められる競争力とは、単にAIを使えることではありません。AIを知識・ツール・システムと連携させ、実際の業務プロセスの中で機能させられる能力こそが重要になると考えています。

今回のDomain Twin™寄贈を通じて、次世代AIが単なるチャットボットではなく、タスクを遂行し、業務プロセスを推進し、意思決定を支える『業務を支えるパートナー』であることを学生たちに伝えたいと考えています。

これはProfet AI初の寄贈プロジェクトの出発点でもあります。今後はこのモデルをさらに多くの大学へ展開し、教育機関と共に、未来の産業ニーズに即したAgentic AI人材の育成を進めていきたいと考えています。」

Profet AIにとって、今回の国立台北科技大学 管理学院との提携は、産学連携と人材育成を推進する重要な一歩であり、今後のキャンパス連携拡大に向けた重要なマイルストーンとなります。

今後もDomain Twin™とAI人材育成モデルをより多くの高等教育機関へ展開し、学術交流と産学連携をさらに深めていきます。そして、若い世代がAIを本質的に理解し、実際の産業現場で活躍できるよう支援してまいります。

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